見たことがない絵

日本海で釣りをよくしていたお爺ちゃんが、釣りに行くことができなくなった。
どんなに良い景色の海だったかを話してくれた。

タイトル:見たことがない絵
素材: キャンバス 紙 アクリル スピーカー など
制作年:2014年 

幼少期になすびの絵を描いたら、その絵が入賞した。巡回してヨーロッパにまで行ったらしい。
その絵はどこかに行って手元には返ってこなかった。
2014年『WALD Fundraising 2014企画「TEXT/New Fiction」』
(WALD ART STUDIO/福岡)での展示風景。

 人から聞いた話をもとに絵を描く。好きな景色であったり、昔見た景色、小さい頃に描いた絵、今は手元にない大切なものなど、対話者の記憶に基づいて話してもらい、その話を聞き想像した景色を絵にする。相手に近づくこと。相手のイメージに近づくこと。 他者の眼になって想像する。展示には、絵とともに、対話した際の音源を一緒に展示した。絵から声が聞こえてくるように、絵の裏側にスピーカーが仕込まれている。絵が喋るイメージ。絵の記憶が聞こえるイメージ。
 もともとは絵を描くことから美術を始めたのだが、じょじょに描けなくなった。描くのが楽しくないし、描く意味が分からなくなったからだ。最近、やっとその理由に気がついた。絵は誰かの為に描くものなんだ。そうしたら少しだけ描けるようになった。