もとのはなし

広島城の前で撮影中の様子

昔の広島城の様子。
たくさんの蓮が咲いています。

陶土で火の玉を制作中の様子。

タイトル:もとのはなし
素材:映像、陶器など
サイズ:19分53秒
制作年:2022年

「もとのはなし」は、原爆の爆心地付近にあたる広島市基町という地域で取材を行い制作された。被爆直後から広島市にはたくさんのバラックがあちこちに建てられたが、復興とともにバラックは姿を消していった。取材地の基町は1970年代までバラックを残しており、戦後復興期の景色を最後まで残していた地域だった。本作の参加者の一人は、当時からこの基町に住んでおり、インタビューで戦後の実体験を話してくれている。この方が、最初のインタビューを受けてくれ、基町で講演があった人形浄瑠璃、河原で見た火の玉の話、広島城のお堀での遊び等の話をしてくれた。この話をオリジナルの話として設定し、他の参加者を募り、オリジナルの話を自分の話のように話してもらうという方法で撮影、制作さたものが本作である。

広島では、被爆者が被爆体験を話す活動や、その話を記録する活動などがたくさん行われてきた。最近では被爆者が高齢になったことで、被爆体験の説話を守る活動として、被爆体験を語る伝承者を育成しようとする動きがある。本作品では、伝承の難しさをテーマとし、上記のように伝言ゲームのような方法で、オリジナルの話を別の人に伝えてもらうというワークショップのような場を設定して撮影を行った。また、参加者の話ぶりから、実体験なのか聞いた話なのか、本当の話なのか、作り話なのかよく分からないものに見えるよう、意図的な編集を施している。鑑賞者は、映像制作の背景まで知ることで、伝承することの難しさや、歴史を学ぶことの難しさを知ることができる。